
諸田由里子 ピアノ・リサイタル
実際に聴きに行ったのは6/10日です。
プログラムは
ヤナーチェク:草陰の小径にて Ⅷ-17 より「落ち葉」
ヤナーチェク:霧の中で Ⅷ-22
ヤナーチェク:ピアノソナタ 「1905年10月1日 街頭にて」 Ⅷ-19
シューベルト:ピアノソナタ 第21番 変ロ長調 D.960
このリサイタルの事を聞いたのは、今年の3月にヤマハホールでのピリス ピアノ・リサイタルで諸田さんにお会いした時でした。
その時のピリスもシューベルト ピアノソナタ B-Dur D.960 …
プログラムにも書いてありますが、「ありのままの諸田さん」を聴いてきました。
プログラムには19時30分開演となっていますが、実際には19時15分開演です。
可愛らしい間違いですね(笑)
ピアノはベーゼンドルファー…
バッハではないので97鍵ではなく普通の88鍵です。
「草陰の小径にて」は、最愛の娘オルガの死に対する哀悼音楽…
この中で第2曲の「落ち葉」は「愛の歌」を表しています。
全体的には喪失というイメージの曲集ですが、その中からあえて愛の歌を選択されました。
「霧の中で」は、ヤナーチェクの焦りと怒りを表した曲という解釈がされていますが、実際にはどうなんでしょうか?
Andante、Molto Adagio、Andantino、Prestoの4曲構成ですが、力強い感じの曲でした。
私は諸田さんの手が見える席で聴いていましたが、黒鍵の嵐でした(笑)
ヤナーチェクのピアノソナタは、デモで殺されたランティシェーク・パヴリークへの追悼作品…
第1楽章:予感、第2楽章:死 とうい構成です。
実際には第3楽章に葬送行進曲があったらしいですが、気に入らなっかのか焼き捨ててしまったそうです。
この曲もヤナーチェクの心情が表現された曲でした。
ヤナーチェクを聴く機会は殆どないので、今回聴けて嬉しかった!
シューベルトのD.960ですが、諸田さんにとってというかピアニストにとっては特別な曲だそうで…
先輩ピアニストに、今度のリサイタルで演奏すると話したら…
「私なら死ぬ前日のリサイタルで演奏するね」と言われたとか…
諸田さんは、「今だから弾ける」「今しか弾けない」D.960を聴いてほしくてプログラムに入れたそうです。
今年はなぜかCDでも生演奏でもD.960を良く聴いています。
ポリーニの忙しない演奏や、リヒテルのゆったりした演奏…
でも一番良いのが、ピリスのCDです。
だって、自宅から事務所までゆっくり歩いて通勤すると、ちょうど聴き終わるから(笑)
ピアニストの中にはそれぞれのシューベルトがいて、諸田さんの場合は…
思ってたよりちょっと強めのピアニシモで歌い始め、心に染み入る美しい旋律が展開されて行きました。
8小節辺りからたびたび出てくる低いトリルも、何回も聴いているので怖くありません(笑)
第2楽章では、それまでこらえていた涙も流れ出してきます。
悲しいけど、透明感のある演奏… 不思議です。
第3楽章が始まったらもう安心。これからは泣きません(笑)
しかし、最終楽章の後半…
全休符の後と最後のPrestoの直前で、気合を入れるかのような諸田さんの息遣いが聞こえ、こらえていた最後の涙も出尽くしました。
きっと、5年後、10年後には違ったD.960が聴けるんだろうな~
是非、聴かせて下さい!
アンコールはシューベルトの楽興の時 第3番 ヘ短調 D.780-3。
この曲は1年ほど前にちょっと弾きたくて譜読みをした曲でした。
その後、入院とかがありうやむやになっています。
実際に生演奏を聴けてラッキーでした。
諸田さんは、この日は昼間も60分位の「0歳からのコンサート」を行っていて大変お疲れ様でした。
しかし、普段は音楽って通勤時とか出張などの移動時間にiPodで聴くのが殆どで、演奏会やリサイタルに足を運んで音楽を聴くためだけの時間を作るってすごい贅沢なんだな~と再認識しました。